「この服だけは、絶対に捨てられない」。松村北斗がそう語るのは、ボロボロになった白いレザージャケットだ。ジャニーズ入所翌日、伝説のプロデューサー自らが「私服で出なさい」と勧めた、運命の一着である。あの日から始まった彼の物語は、華やかなデビューの裏で、一度は仕事がゼロになるという逆境をも経験する。しかし、彼はそこで終わらなかった。静岡から上京した少年が、SixTONESの核として、そして確かな演技力で注目を集める俳優として、どのようにして這い上がったのか。その原動力は、あのボロボロのジャケットに込められた覚悟にあった。
基本プロフィール
| フリガナ | まつむら ほくと |
|---|---|
| 生年月日 | 1995年6月18日 |
| 出身地 | 静岡県島田市「松村北斗 (SixTONES) アトリエの前で vol.3」『東海ウォーカー』(2019年6月号、118頁、KADOKAWA)「2018/4-2019/3 ジャニーズJr.カレンダー BLUE Johnnys'Jr. DATA BOOK」WiNK UP編集部 特別編集(2018年3月9日発売、37頁、ワニブックス) |
| 身長 | 177cm |
| 血液型 | B型 |
| 所属事務所 | ジャニーズ事務所(2009年 - 2023年)・SMILE-UP.(2023年 - 2024年)・STARTO ENTERTAINMENT(2024年 - ) |
| ジャンル | アイドル、歌手、俳優、タレント |
白いレザージャケットとサプライズデビュー
オーディションを受けた翌日、いきなり『ザ少年倶楽部』の収録現場に立たされた少年がいた。松村北斗のジャニーズ人生は、まさに「サプライズ」から始まったのだ。当時14歳。憧れの山下智久を追ってジャニーズ事務所の門を叩いたものの、そのスピード出世に本人も周囲も驚いたに違いない。しかも、初出演の衣装は私服の白いレザージャケット。ジャニー喜多川自ら「地味だから」と指示したというエピソードは、彼の型破りなキャリアの序章を象徴している。
そのジャケットは、彼が「一生もの」として今も捨てられずにいる。ボロボロになったその布切れは、不安と期待が入り混じったデビュー前夜の思い出そのものだ。そして、華々しいスタートを切ったかに見えた彼に、初めての試練が訪れる。B.I.Shadowとしてデビューするも、まもなくメンバーのSexy Zone移籍でグループは解散。一気に仕事がなくなった「冬の時代」を迎えるのだ。
しかし、ここで腐らずにバックダンサーとしてステージに立ち続けたことが、逆転の契機となった。KinKi Kidsのセクシーな楽曲に挑戦したパフォーマンスがプロデューサーの目に留まり、『私立バカレア高校』への出演が決まる。役者としての才能が開花し、ここから彼の本当の戦いが始まったのだ。
『私立バカレア高校』で開花した役者魂
松村北斗の名が一躍知られるきっかけは、意外にも「無職」の時期にあった。B.I.Shadow解散後、仕事が途絶えた絶望の底で、彼は「今以上に失うものはない」と覚悟を決めた。その思い切りの良さが、KinKi Kidsのセクシーな楽曲に挑戦するバックダンサーとしてのパフォーマンスを生み、ドラマ『私立バカレア高校』のプロデューサーの目に留まる。これが俳優としての大きな転機となったのだ。
彼の代表作といえば、やはりデビュー作となった『私立バカレア高校』の浅田哲也役だろう。寡黙で絵になるその佇まいは、窪田崇監督から「立っているだけで絵を持たせなきゃいけない難しい役を上手く演じてくれた」と絶賛される。その後も『黒の女教師』で準主役に大抜擢されるなど、その真面目でピュアながらも強い目力が、次々と監督やプロデューサーを惹きつけてきた。
しかし、彼の魅力は役者としての才能だけではない。デビュー前夜、ジャニー喜多川に私服の白いレザージャケットで出演するよう勧められたエピソードは、彼の芸能人生を象徴する。ボロボロになった今でも手元に残るそのジャケットは、不安や慢心を取り除くための「原点」だという。華々しい活躍の裏には、常に初心を見つめ直す謙虚な姿勢が息づいているのだ。
出演作品
| 公開・放送開始年 | 作品名 |
|---|---|
| 2026 | 白鳥とコウモリ |
| 2026 | 九条の大罪 |
| 2025 | 秒速5センチメートル |
| 2025 | ゴールデンストーンズ |
| 2025 | ファーストキス 1ST KISS |
| 2025 | アンサンブル |
| 2025 | ゲームオブストーンズ |
| 2024 | 路上のルカ |
| 2024 | 西園寺さんは家事をしない |
| 2024 | ディア・ファミリー |
| 2024 | 夜明けのすべて |
| 2024 | メイキングドキュメンタリー 『すずめの戸締まり』を辿る |
| 2023 | キリエのうた |
| 2023 | ノッキンオン・ロックドドア |
| 2022 | すずめの戸締まり |
| 2022 | ホリック xxxHOLiC |
| 2022 | 恋なんて、本気でやってどうするの? |
| 2021 | 劇場版「きのう何食べた?」 |
| 2021 | カムカムエヴリバディ |
| 2021 | 女王の法医学~屍活師~ |
| 2021 | 女王の法医学~屍活師~ |
| 2021 | ライアー×ライアー |
| 2021 | レッドアイズ 監視捜査班 |
| 2020 | TrackONE -IMPACT- [通常版] / SixTONES |
| 2020 | 一億円のさようなら |
| 2020 | 10の秘密 |
| 2019 | パーフェクトワールド |
| 2019 | 少年たち |
| 2018 | 世にも奇妙な物語 ’18秋の特別編 |
| 2018 | 坂道のアポロン |
ボロボロのジャケットに込めた初心
あの白いレザージャケットは、彼の原点だ。松村北斗がジャニーズ事務所のオーディションに合格した翌日、何と『ザ少年倶楽部』の収録現場に直行させられる。私服しか持っていなかった彼に、ジャニー喜多川は「衣装が地味だから」と、自身の毛皮のついた白いレザージャケットを着用するよう勧めたという。このサプライズだらけのデビューが、彼の芸能人生の幕開けだった。
そのジャケットは、波乱の始まりを象徴する「一生もの」として今も大切に保管されている。ボロボロに使い込まれたその服を時折眺めることで、彼は初心に帰り、慢心を戒めるのだ。これは単なる思い出話ではない。華やかな世界に足を踏み入れながらも、常に己の根幹を見失わないための、彼なりの儀式なのである。
順風満帆とは程遠い道のりも経験した。B.I.Shadow解散後は仕事が激減するも、「負けたままで終わるのは悔しい」と、バックダンサーとしてステージに立ち続けた。その努力が実り、『私立バカレア高校』で俳優デビューを果たすと、その類稀な存在感はたちまち注目を集める。『黒の女教師』では早くも準主役に大抜擢され、プロデューサーをして「目力の強さが印象に残っていた」と言わしめた。
その確かな実力は、数々の受賞歴が証明している。『カムカムエヴリバディ』『西園寺さんは家事をしない』でのザテレビジョンドラマアカデミー賞助演男優賞、『ホリック xxxHOLiC』での日本アカデミー賞新人俳優賞、そして『すずめの戸締まり』でのアニー賞声優賞ノミネート。さらに『夜明けのすべて』では、日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞「ファンが選ぶ最高演技賞」に輝いた。アイドルとして、俳優として、声優として、その才能は多角的に開花し続けているのだ。
白いレザージャケットを手にした少年は、今や確固たる実力派へと成長を遂げた。しかし彼の目には、あの日の驚きと覚悟が、今も確かに宿っているに違いない。