僕はニューヨークに33年住んでいる。33年を本で例えると365ページが1年と計算して12045ページの本となる。今回はテキサスのオースティンでのエリック・クラプトンのコンサートでの1ページ。
コロナパンデミックから約1年半、初めてFoo Fighters がアメリカの有人コンサートをNYのマディソン・スクエア・ガーデンで開催したのが昨年8月のこと。そのニュースはアメリカ全土で、コロナ禍から抜け出す一つの希望として取り上げられた。
それから各地で大物アーティストがコンサートを再会。僕はエリック・クラプトンがUSツアーをする事を知った。
生のクラプトンを観る事が出来るのはこれで最後かもしれないと思い、9月15日、テキサスのオースティンでのコンサートをニューヨークから見に行く事にした。
クラプトンはアンチワクチン者なので、アメリカの大都市(=民主党が強い)でのコンサートはコンサート運営団体から許可が下りない。南部の地方都市(=共和党が強い)のみの開催で、USツアーにもかかわらずニューヨーク、ロス、シカゴなどは含まれていなかったのだ。
コンサートは素晴らしく最高のパフォーマンス。元々音楽をやっていた僕にはクラプトンのギターソロで涙が出る程の感銘を受けた。
それ以上に心を打たれたのはコンサートに来ている人々であった。クラプトンゆえ、観客の年齢層は高いのは当然なのだが、多く若い観客たちは、ちょうどクラプトンと同年代であろう両親、あるいは祖父母とともに家族連れで見に来ていた。
クラプトンの最後のコンサートになる可能性もあり、観客としても最後に行けるコンサートなのかなと思うと胸が熱くなった。
コンサート終了後、会場の外に手を繋いで歩いている老夫婦を見かけたので、「It was great concert, wasn’t it!!」と声を掛けたら、なんと二人とも、ストーン状態。
あの年にしてマリファナを吸ってコンサートを楽しむ老父婦に思わず「粋だね!!」と日本語と一緒にThumb Upのジェスチャーをしたら、決して日本語を理解したとは思わないけど二人とも微笑んでくれた。
その笑顔は僕の人生で忘れられないすばらしい笑顔となった。
はるばるニューヨークからオースティンまでコンサートを観るためだけに飛んできたが、それは言葉で表現できないぐらいの価値があり、五感と心に刻まれる大切な時間になった。
(国際プロデューサー・仁龍之介)