
11月19日、奈良地裁。張り詰めた空気の中で行われた、安倍晋三元総理銃撃事件の第9回公判。
殺人罪などに問われている山上徹也被告(45)の裁判で、実妹が証言台に立った。
そこで明かされたのは、世間の想像を遥かに超える母親の「集金地獄」と、家族を食い物にする常軌を逸した実態だった。
「ラスベガスの金を返せ」と腕を掴まれ…
全国紙記者が法廷での様子を解説する。
「この日、妹は20代で実家を出た後も、母親から執拗に金を要求されていた事実を赤裸々に証言しました。母親は旧統一教会の教団本部がある韓国への渡航費用だけでなく、あろうことか『ラスベガスに行った費用を立て替えてもらったから、あんたが返さないといけない』などと理不尽な理由で娘に金を迫っていたといいます」
さらに法廷を凍り付かせたのが、母親による実力行使の描写だ。
「金を渋る妹に対し、母親は腕を強く掴み、そのまま引きずって歩いたというのです。妹はこの時の恐怖を振り返り、『この人は母親ではない、統一教会の人なんだと(認識した)』と、肉親としての情が完全に断ち切られた瞬間を吐露しました。傍聴席からは、あまりに惨い仕打ちにすすり泣く声さえ聞こえました」(前出・記者)
山上被告を“修羅”に変えた「妹への執着」
山上被告が犯行に至った最大の動機は、母親が入信して家庭崩壊したことへの恨みとされるが、その深層には常に「妹を守りたい」という悲痛な願いがあった。
週刊誌デスクが指摘する。
「兄が自殺し、最後に残された妹までもが、母親=教団によって骨の髄までしゃぶり尽くされようとしていた。今回の証言で、母親が妹を『娘』としてではなく、単なる『集金のための道具』としか見ていなかったことが明白になりました。山上被告にとって、妹が腕を掴まれ引きずられる姿は、自身の魂が引き裂かれるほどの苦痛だったはず。この絶望こそが、彼をテロリズムという修羅の道へと走らせた決定打だったのではないでしょうか」
法廷でさらけ出された「母の狂気」と「妹の絶望」。
弁護側はこの証言をテコに情状酌量を求める構えだが、検察側もこの重すぎる事実を前に、難しい対応を迫られることになる。
「この人は統一教会の人なんだ」――。妹が放ったその一言は、法廷の空気を切り裂いたのであった。