「水着審査を拒否して東映に入った箱入り令嬢」――佐久間良子のキャリアは、その破天荒な決断から始まった。500坪の敷地に囲まれた練馬の裕福な家で、文字通り「外の世界」を知らずに育った彼女が、親族総反対を押し切って飛び込んだのは、東映のスター養成所だった。デビュー2年目で雑誌の人気投票トップ10入りを果たし、やがては大河ドラマ初の単独主演女優となるその道程は、生まれながらの強さと覚悟が光る。

基本プロフィール

フリガナ さくま よしこ
生年月日 1939年2月24日
出身地 東京府東京市板橋区(現・東京都練馬区別冊宝島2551『日本の女優 100人』p.56.)
血液型 O型
ジャンル 女優

水着審査を拒否した箱入り娘

高塀に囲まれた五百坪の屋敷。そこにいたのは、文字通りの「箱入り娘」だった。戦後の混乱期を経て、野生児のように山を駆け回った少女は、やがて東京・練馬の名家に戻る。私立川村学園で過ごす日々は、彼女が「外の世界」を知る最初の経験となった。

その転機は、高校時代に訪れる。先輩女優・小宮光江に誘われて訪れた東映の運動会。その場にいた幹部たちの目は、清楚ながらも芯の強さを秘めた少女に釘付けになった。ほどなくして、彼女の自宅応接間では、東映の幹部が両親を懸命に説得していた。親族会議では「絶対反対」の声が繰り返される。しかし、外の空気を吸った少女の心は、すでに動き始めていた。

「きめました。1年かぎりでもいいので女優に挑戦します」

この一言が、佐久間良子の人生を劇的に変える。1957年、東映ニューフェイス第4期の審査では、水着審査を拒否するという異例の行動を見せた。それでも、マキノ雅弘や三村明といった審査員の目は、彼女の内に秘めた「何か」を見逃さなかった。補欠合格という形ではあったが、東映の扉は開かれたのである。

研修を経て、1958年、『美しき姉妹の物語・悶える早春』で端役デビューを果たす。しかし、その翌年に出演した『台風息子』シリーズで、江原真二郎の相手役に抜擢されると、状況は一変する。デビュー2年目にして雑誌『平凡』の人気投票で女優部門10位にランクイン。東京撮影所が待ち望んだ、期待のホープ女優の誕生だった。高塀の内側から飛び出した少女は、いつの間にかカメラの前で輝きを放つスターへと変貌を遂げていたのである。

『人生劇場』で清純派を一蹴

「箱入り娘」が銀幕のヒロインに変貌する瞬間は、意外な場所で訪れた。群馬の野山を駆け回った少女時代を経て、私立川村高校に通う佐久間良子は、ある日、先輩女優に誘われて東映の運動会に足を運ぶ。その帰宅後、応接間で繰り広げられていたのは、東映幹部による両親への熱心な説得劇だった。親族会議は「絶対反対」を繰り返すばかり。しかし、高く囲まれた邸宅で育った彼女の内側には、自らの意志で道を切り拓こうとする強い気概が芽生えていた。「一年限りでもいい。女優に挑戦します」。その一言が、彼女の運命を決定的に変える。

東映ニューフェイスでは水着審査を拒否するという異色のデビューを飾りながら、その清楚で気品ある佇まいはたちまち注目を集めた。デビュー2年目には雑誌の人気投票でトップ10入りを果たし、期待のホープとして売り出される。しかし、真のブレイクは、彼女が「汚れ役」に挑んだ時に訪れた。1963年、『人生劇場 飛車角』で鶴田浩二演じる侠客の情婦を演じ、それまでの良家の令嬢イメージを一蹴してみせたのである。監督のマキノ雅弘の助言によるこの役柄は、彼女に新たな演技の地平を開かせるきっかけとなった。

そして、彼女の名を不朽のものにした代表作が『五番町夕霧楼』である。廓の女将という複雑な役柄を見事に演じ切り、シルバースター主演女優賞を受賞。続く『湖の琴』ではNHK主演女優賞に輝き、その演技力が広く認められるに至る。裕福な家庭に育ちながら、社会の底辺に生きる女性の哀しみや情念を深く描き出すその表現力は、彼女の内面に潜む並々ならぬ感受性と研究熱心さの賜物だった。東映が路線転換し出演作が減る中でも、他社作品でヒロインを務めるなど、女優としての可能性を貪欲に追求し続けたその姿勢こそが、佐久間良子という女優の真骨頂なのである。

出演作品

公開・放送開始年 作品名
2019 アース クエイク バード
2016 浅見光彦シリーズ35 風のなかの櫻香
2011 源氏物語 千年の謎
1996 SMAP×SMAP
1993 スペインからの手紙 ベンポスタの子どもたち
1990 遺産相続
1990 新吾十番勝負
1989 春日局
1983 細雪
1983 古谷一行の名探偵・金田一耕助シリーズ
1981 おんな太閤記
1979 病院坂の首縊りの家
1975 雪夫人繪圖
1973 女・その愛のシリーズ
1972 新・平家物語
1971 戦争と人間 第二部
1970 商魂一代 天下の暴れん坊
1969 超高層のあけぼの
1969 風林火山
1968 大奥絵巻
1968 喜劇 “夫”売ります!!
1968 わが闘争
1968 人間魚雷 あゝ回天特別攻撃隊
1968 喜劇 初詣列車
1967 喜劇 団体列車
1967 旅路
1967 大奥(秘)物語
1967 あゝ同期の桜
1967 喜劇 急行列車
1966 湖の琴

舞台で開いた第二の黄金期

「箱入り娘」が東映のスターになった日、その裏には水着審査拒否という反骨があった。

500坪の邸宅に囲まれて育った佐久間良子は、文字通りのお嬢様である。そんな彼女が東映ニューフェイスに応募した際、周囲の予想を裏切って水着審査を断固拒否した。それでもマキノ雅弘らに見出され、補欠合格という形で映画界に足を踏み入れる。デビュー2年目には雑誌の人気投票でトップ10入りを果たし、東映初の本格派女優としての道を駆け上がった。

その転機は1963年の『人生劇場 飛車角』だ。清純派イメージを打ち破り、鶴田浩二演じる侠客の情婦という「汚れ役」に挑戦。この大胆な変身が評価され、『五番町夕霧楼』ではサンケイ新聞社シルバースター主演女優賞を受賞する。さらに『湖の琴』ではNHK主演女優賞を手に、確かな演技派としての地位を確立したのだ。

しかし、東映がヤクザ映画とポルノ路線に傾倒する中、彼女の出番は激減する。だが、そこで終わらなかった。舞台に活路を見出した佐久間は、1983年の『唐人お吉』で菊田一夫演劇大賞を受賞。1994年の再演では文化庁芸術祭賞に輝き、女優としての第二の黄金期を築く。

最も劇的なのは2004年、三島由紀夫原作『鹿鳴館』での共演だった。元夫である平幹二朗、そして二人の息子である平岳大と、親子三代が一堂に会する舞台は、まさに伝説的な一幕となった。華やかな映画スターとしての顔以上に、舞台女優としての芸術的追求が、彼女のキャリアに深みと輝きを加えているのである。

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