福島第一原発で東日本大震災による原子力事故が発生して間もない頃、テレビ業界では放射能汚染問題を揶揄する前代未聞の放送事故「怪しいお米セシウムさん」事件が発生した。
問題のシーンが放送されたのは2011年8月4日に東海テレビが生放送していたローカルワイド番組「ぴーかんテレビ」の番組内。
無関係な画面に切り替わる
この日、同番組の「しあわせ通販」のコーナーで「秋田県産稲庭うどん」の解説をしている最中、まったく無関係な「夏休みプレゼント主義る祭り」による「岩手県産ひとめぼれ10kg当選者」と書かれた画面に切り替わり、当選者名を使った極めて不謹慎な“ブラックジョーク”が記されていたのである。
「怪しいお米セシウムさん」「汚染されたお米セシウムさん」
3名の当選者の住所と名前を記す位置には「怪しいお米セシウムさん」「怪しいお米セシウムさん」「汚染されたお米セシウムさん」と記載。23秒間にわたって表示され続けたのだ。
その直後、同番組MCを担当する福島智之アナウンサーが「いま『しあわせ通販』の映像のなかで違う映像が出てしまいました。考えられないような不謹慎な内容でした。本当にすいませんでした」と頭を下げた。
番組終了間際にも福島アナは「今日、番組のなかで大変不謹慎な映像が流れてしまいました。重ねてお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」と謝罪。
直後に本来の「岩手県産ひとめぼれ10kg当選者」を発表したものの、一宮市、松阪市、春日井市の当選者名は手書きによるものだった。
この放送を受け東海テレビには抗議の電話とメールが殺到。岩手県も公式に「東日本大震災津波からの復興に全力をあげて取り組んでいる本県を誹謗中傷したもの」と抗議を寄せた。
「30年以上も東海テレビの仕事を任されてきた大ベテラン」
その結果、番組打ち切りに至った同番組だが、なぜこのような放送事故を起こしてしまったのか。
「『セシウムさん』のテロップを制作したスタッフは東海テレビの下請けであるコンピューターグラフィックス制作会社に勤務していた50代男性。30年以上も東海テレビの仕事を任されてきた大ベテランなんです」と語るのは事情を知るテレビ関係者だ。
「この人物は当時88人体制だった『ぴーかんテレビ』スタッフでも最年長。本人は『ふざけた気持ちでつくってしまった』と明らかにしているのですが、事件発生から長い年数を経た現在、同局内では問題のテロップが放送されてしまった“根本的な理由”が彼に指摘されているんです」
根本的な理由とは。
彼の『人間性』に起因する事故
「年下である他のスタッフとまったくコミュニケーションを取れていなかったんです。そのせいで誰にもツッコまれず本番に持ち込まれてしまった。当時、同番組を担当していたスタッフいわく『話しかけてもものすごく愛想が悪く近づきがたい人』だったそうです。スイッチャーのミスなどアンラッキーが重なった事故とはいえ、彼の『人間性』に起因する事故であることは間違いありません」(同関係者)
テレビ史に残る大放送事故であった。