東京駅近くでアルバイト中の女子大生が、一瞬のスカウトで銀幕のヒロインに転身した。1974年、東映が「聖獣学園」の主演を探していた時だ。その名は多岐川裕美。しかし、清純派スターへの階段を上り始めた彼女を、過去の一枚の写真が襲う。デビュー作でのヌードシーンが週刊誌にスクープされ、「騙された」という彼女の言葉は、映画界に激震を走らせた。

基本プロフィール

フリガナ たきがわ ゆみ
生年月日 1951年2月16日
出身地 東京都杉並区
身長 160cm
血液型 O型
所属事務所 ハーキュリーズ(2014年まで)・トライストーン・エンタテイメント
ジャンル 俳優・歌手

喫茶店の一瞬が生んだ銀幕のヒロイン

東京駅近くでアルバイト中の美しい女子大生――その噂を聞きつけた東映プロデューサーが新宿の喫茶店へと急いだ。1974年、22歳の多岐川裕美は、まさにその一瞬の出会いから銀幕の世界へと放り込まれることになる。山脇学園短大を中退し、デビュー作『聖獣学園』のヒロインに抜擢された彼女は、監督が偶然目にした女性週刊誌の懸賞当選者名から「裕美」の名を授かり、役名と合わせて「多岐川裕美」という芸名が誕生した。東映ポルノ最後の時代に、ヌードもいとわぬ新人として鮮烈なデビューを飾ったのである。

しかし、彼女は単なる「徒花」ではなかった。翌年には千葉真一主演の『けんか空手』シリーズで存在感を示し、『仁義の墓場』では渡哲也と究極の愛を演じてその演技力の片鱗を見せつける。清純な顔立ちとは裏腹に、内に秘めた強い気性が、次第に役柄に深みを与えていった。テレビドラマへと活路を広げる中で、東映からの移籍を望みながらも難航するなど、順風満帆とは言えない時期もあったが、『七瀬ふたたび』の火田七瀬役で一気に国民的ヒロインの座を射止める。彼女が演じたクールでミステリアスな少女像は、時代を超えて伝説となったのだ。

『七瀬ふたたび』で伝説的ヒロインへ

東京駅近くでアルバイト中の女子大生が、ある日突然スカウトされ、映画界に投げ込まれた。それが多岐川裕美のすべての始まりだった。1974年、東映のプロデューサーが彼女を見出し、『聖獣学園』への主演が決まる。監督が雑誌の懸賞当選者から「裕美」の名を借り、役名と合わせて誕生した芸名は、やがて時代を代表する女優の代名詞となる。

デビュー作で大胆なヌードを披露した彼女は、東映ポルノ最後の花形として鮮烈な印象を残した。しかし、その美貌と存在感は、単なるピンク映画のスターには収まらなかった。翌年、渡哲也主演の『仁義の墓場』では、破滅へと向かう男を愛する女・石川地恵子を演じ、その切なさと強さで観客の心を揺さぶる。松竹に貸し出された『続・愛と誠』では、影の大番長・高原由紀役でクールな悪女像を確立し、その演技の幅を見せつけた。

彼女の真のブレイクは、テレビの世界で訪れる。1979年、『七瀬ふたたび』で演じた火田七瀬は、まさに伝説的ヒロインとなった。不思議な力を持つ少女を演じた多岐川の清純で神秘的な佇まいは、青少年を中心に圧倒的な支持を集め、社会現象にまで発展する。同じ年の『俺たちは天使だ!』では、クールな秘書ユーコ役でコミカルな一面も披露し、幅広い層の人気を獲得したのだ。

歌手としても「酸っぱい経験」「めぐり逢いしのび逢い」などのヒット曲を放ち、まさにマルチな才能を開花させた清純派スターだった。しかし、その裏には移籍を巡る確執や、デビュー作のヌード問題など、数々の波瀾が潜んでいた。それらを全て乗り越え、常に新しい役に挑戦し続けるその強さこそが、多岐川裕美の真骨頂と言えるだろう。

出演作品

公開・放送開始年 作品名
2024 わたしの宝物
2021 ラブファントム
2020 不協和音 炎の刑事 VS 氷の検事
2018 ダブル・ファンタジー
2017 終着駅の牛尾刑事vs事件記者・冴子~森村誠一の“ラストファミリー”
2016 鬼平犯科帳 THE FINAL 後編 雲竜剣
2016 鬼平犯科帳 THE FINAL 前編 五年目の客
2016 クハナ!
2016 カノン
2016 往復書簡~十五年後の補習
2016 刑事バレリーノ
2015 ゴーストライターの殺人取材2~セレブの罪を代筆する女!
2015 硝子の葦
2011 鬼平犯科帳スペシャル 一寸の虫
2011 遺留捜査
2010 鬼平犯科帳スペシャル 高萩の捨五郎
2009 鬼平犯科帳スペシャル 雨引の文五郎
2008 鬼平犯科帳スペシャル 引き込み女
2007 鬼平犯科帳スペシャル 一本眉
2006 鬼平犯科帳 スペシャル 兇賊
2006 功名が辻
2005 ベロニカは死ぬことにした
2005 鬼平犯科帳スペシャル山吹屋お勝
2000 六番目の小夜子
1999 金融腐蝕列島〔呪縛〕
1996 風のかたみ
1996 GONIN2
1996 SMAP×SMAP
1995 鬼平犯科帳
1995 あした

ヌード拒否が示した強いこだわり

東京駅近くでアルバイト中の女子大生が、一瞬のスカウトで銀幕のヒロインに変身した。1974年、東映プロデューサー天尾完次が喫茶店で声をかけたその女性こそ、多岐川裕美である。偶然開いた雑誌の懸賞当選者名から「裕美」をもらい、デビュー作『聖獣学園』の役名「魔矢」の姓を合わせて誕生した芸名は、彼女の運命を暗示していた。

清純な顔立ちとは裏腹に、デビュー作でいきなりヌードを披露。東映ポルノ最後の花形としてスタートを切るが、彼女の本領はむしろその後に発揮された。1975年、渡哲也主演『仁義の墓場』では究極の破滅愛を演じて鮮烈な印象を残し、翌年にはエランドール賞新人賞を受賞。早くもその実力が認められることになる。

しかし、彼女には強いこだわりがあった。1978年、浦山桐郎監督『飢餓海峡』でヒロインに起用されるが、求められたヌードを拒否して降板。移籍問題も重なり波乱の時期を迎えるが、この決断が後のキャリアを決定づけた。テレビドラマ『七瀬ふたたび』(1979年)で演じた火田七瀬は伝説的ヒロインとなり、『俺たちは天使だ!』の秘書ユーコ役とともに、彼女を国民的スターへと押し上げたのだ。

意外なのは、スクリーンで見せるクールなイメージとは真逆の素顔だろう。トーク番組では天然ボケを披露し、極度の酒豪として知られる。親友の萬田久子とは飲み仲間であり、ヘビースモーカーでもある。デビュー作のヌード問題で監督と対立したエピソードにも表れるように、気性の強さと芯の通った生き方は、華やかなイメージの奥に潜む彼女の真骨頂かもしれない。

2022年、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で朝ドラ初出演を果たした。かつての清純派スターは、今もなお新たな挑戦を続けている。

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