あの巨大津波に呑まれ、一夜を山で明かした男がいる。サンドウィッチマンの富澤たけしだ。2011年3月11日、気仙沼でのロケ中に東日本大震災に遭遇した彼は、相方の伊達みきおやスタッフと共に安波山へ避難し、眼下で町が炎に包まれる光景を目撃した。生死の境をさまよったあの体験が、彼の芸人としての根幹を揺るがすことになる。
基本プロフィール
| 出身地 | 東京都板橋区生まれ、宮城県泉市(現・仙台市泉区)育ち |
|---|---|
| 身長 | 170cm |
| 血液型 | AB型 |
| 所属事務所 | グレープカンパニー(2010年7月1日-) |
仙台夕やけ劇場から「親不孝」へ
「普通の会社員にはなりたくなかった」――サンドウィッチマンの富澤たけしの原点は、高校時代のその一言に集約される。東京都板橋区に生まれ、父の転勤で愛知、新潟を経て仙台に落ち着いた少年は、どこか「普通」から逸脱したいという思いを抱えていた。卒業後、就職せずアルバイト生活に入ったのは、役者やクリエイターという夢を諦めきれなかったからだ。
彼の最初の相方は、ラグビー部の同級生・伊達みきおではなかった。一度誘って断られ、別の友人と「ゆやゆよん」を結成する。しかし、目指した仙台吉本は撤退し、活動の場であった「仙台夕やけ劇場」も閉鎖。コンビは解散に追い込まれる。行き場を失った富澤が再び手を伸ばした相手こそ、かつて断った伊達だった。1998年、「親不孝」として再出発を果たすのである。
上京後はホリプロ預かりとなるが、やがてフリーに。コンビ名も「銭と拳」へと変わる。紆余曲折を経て、浜田ツトムを加え「サンドウィッチマン」が誕生したのは、この頃である。浜田脱退後もコンビ名はそのままに、伊達との二人三脚が続く。幾度もの挫折と改名を繰り返した末に、彼らはようやく「普通」ではない道を見つけ出したのだ。
M-1優勝と「ぼんやり」の革命
仙台の路上でネタを磨き続けた男が、全国区の笑いを手に入れた瞬間がある。サンドウィッチマン富澤たけしのブレイクは、2011年のM-1グランプリ優勝という華々しい結果に集約されるが、その裏にはコンビ結成から10年以上にわたる地道な修業の日々が横たわっていた。相方・伊達みきおとの絶妙な間と、富澤が紡ぐ「ぼんやり」とした世界観が、観客の心を鷲掴みにしたのだ。
彼らの代表作といえば、やはりM-1で披露した「漫才師」だろう。富澤が演じる、どこか抜けていて愛嬌たっぷりのキャラクターと、伊達のキレのあるツッコミが生み出す化学反応は、お笑いの新たな可能性を感じさせた。テレビ番組『サンドウィッチマンののぼんやり〜ぬTV』では、その「ぼんやり」したキャラを存分に活かし、東北の風土と人々の温かさをユーモアたっぷりに伝えている。
被災地・気仙沼で東日本大震災に遭遇した経験は、彼らの芸人人生、ひいては人間性に深い影を落としたに違いない。あの日を境に、彼らの笑いにはどこか温かみと、人を思いやる優しさが加わったように感じられる。猫やフィギュア収集、スポーツ観戦といった多彩な趣味が、彼の独特の感性を育んでいることは間違いない。富澤たけしの魅力は、天才的なボケのセンスと、等身大の人間味が絶妙にブレンドされている点にあると言えるだろう。
出演作品
| 公開・放送開始年 | 作品名 |
|---|---|
| 2025 | サンドウィッチマンライブ2024 |
| 2025 | 映画ドラえもん のび太の絵世界物語 |
| 2024 | サンドウィッチマン ライブツアー 2023 |
| 2024 | 漫才協会 THE MOVIE 舞台の上の懲りない面々 |
| 2024 | TBS系人気番組対抗!オールスタードッキリ祭★芦田愛菜&二階堂ふみ人生初の仕掛人 |
| 2023 | サンドウィッチマン ライブツアー 2022 |
| 2022 | サンドウィッチマンのどうぶつ園飼育員さんプレゼン合戦 ZOO-1グランプリ |
| 2022 | 証言者バラエティ アンタウォッチマン! |
| 2022 | サンドウィッチマン ライブツアー 2020~21 |
| 2021 | ロコだけが知っている |
| 2021 | 岬のマヨイガ |
| 2021 | お笑い実力刃 |
| 2020 | バナナサンド |
| 2020 | サンドウィッチマン ライブツアー 2019 |
| 2019 | ウワサのお客さま |
| 2019 | サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん |
| 2019 | アイネクライネナハトムジーク |
| 2019 | サンドウィッチマンライブ2018 |
| 2018 | 大恋愛〜僕を忘れる君と |
| 2018 | 坂上どうぶつ王国 |
| 2018 | サンドウィッチマン ライブ2017 |
| 2017 | 10万円でできるかな |
| 2017 | カルテット |
| 2016 | 帰れマンデー見っけ隊!! |
| 2016 | KEYABINGO! |
| 2016 | 精霊の守り人 |
| 2015 | ちえりとチェリー |
| 2015 | ニッポンの凄腕漁師 |
| 2014 | ごめんね青春! |
| 2013 | 空飛ぶ広報室 |
ゲームオタクと震災が変えた芸人人生
あの絶妙なボケで笑いを取る富澤たけしの、意外な素顔は「ゲームオタク」だ。彼が熱中するのは『ウイニングイレブン』シリーズ。サッカー好きが高じてアルゼンチン代表のユニフォームを着て漫才を披露することもあるが、その情熱は単なるファン活動を超えている。実は幅広いスポーツのユニフォームを収集するコレクターであり、営業では様々なチームのジャージを身にまとって登場するのだ。地元・仙台のベガルタ仙台や楽天イーグルスはもちろん、NBAやNFLのチームグッズまで、そのコレクションは多岐にわたる。
そんな彼の芸人としての転機は、2011年3月11日に訪れた。気仙沼でのロケ中に東日本大震災に遭遇し、津波と火災に囲まれるという恐怖を味わう。しかし、その直後に自身のブログを安否情報の掲示板として開放し、被災地との貴重な情報ルートとなったエピソードは、彼の人間性を物語っている。この経験は、彼の芸風や生き方にも深く影響を与えたに違いない。
その後、サンドウィッチマンは2018年に『M-1グランプリ』審査員に抜擢され、その地位を確固たるものとする。しかし、彼の創作意欲は漫才だけにとどまらない。同年、短編映画監督としてもデビューを果たし、話題賞を受賞するという新たな才能を開花させたのだ。ゲーム、映画、怪談、果ては宇宙人雑誌まで、旺盛な好奇心が彼を突き動かしている。一見ぼんやりとした風貌の裏に潜む、驚くべき行動力と深い教養。これが富澤たけしの真骨頂と言えるだろう。