彼女の名が世界に轟いたのは、たった一つの短編映画からだった。古川琴音は、主演を務めた『春』という作品で、一気に9つの映画祭の頂点に立つ。バレエから演劇へ、そして銀熊賞へ――その歩みは、決して「偶然」だけではなかった。
基本プロフィール
| フリガナ | ふるかわ ことね |
|---|---|
| 生年月日 | 1996年10月25日 |
| 出身地 | 神奈川県 |
| 身長 | 161cm |
| 所属事務所 | ユマニテ |
| ジャンル | 女優 |
生い立ち・デビューまでの経緯
バレエのレオタードから、いきなり殺人容疑者の役に飛び込んだ女がいる。古川琴音のデビューは、そんな衝撃から始まったと言っていい。
神奈川でバレエに明け暮れた少女時代。舞台に立つ快感を知っていた彼女は、中学で演劇部に入り、そのまま大学まで演劇一筋の日々を送る。しかし、彼女が単なる「演劇好き」ではなかったことは、進路選択で明らかになる。就職か、それとも――。「無理かもしれないけど、役者をやってみたい」。その直感に従い、事務所の門を叩いたのだ。
そして2018年、運命が動く。主演短編映画『春』が京都国際映画祭でグランプリを受賞、合わせて9つの映画祭を制覇する快挙を成し遂げる。この鮮烈なデビューが、すべてを変えた。翌年、密室ミステリー『十二人の死にたい子どもたち』で複雑な内面を抱える少女ミツエを演じ、一気に注目を集めることになる。
だが、彼女の本当の凄みは、この後の飛躍にこそある。
ブレイクのきっかけ・代表作
彼女の名が一気に知れ渡ったのは、あの衝撃的な群像劇への参加だった。2019年公開の映画『十二人の死にたい子どもたち』で、謎めいた少女ミツエを演じた古川琴音。その透明感と危うさを併せ持つ存在感は、一作で業界関係者の目を釘付けにした。しかし、そのブレイクの裏には、短編映画『春』での確かな実績があった。同作で受賞したTAMA NEW WAVEベスト女優賞は、彼女の潜在能力をいち早く見抜いた証左と言えるだろう。
古川琴音の真骨頂は、何よりもその身体性にある。幼少期から続けたバレエが培った、研ぎ澄まされた身体表現だ。それは2021年、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した『偶然と想像』において、言葉以上に情感を伝える仕草や佇まいとして結実した。カメラの前で「在る」ことの強さを、静かに、しかし確かに示してみせたのである。
そんな彼女がテレビドラマで初主演を果たしたのは、2022年のNHK特集ドラマ『アイドル』だった。複雑な内面を抱える女性を演じきり、新たな境地を見せつける。そして2023年、大河ドラマ『どうする家康』への出演は、その演技の幅が時代劇にも通用することを証明した。バレエ少女が、いまや日本の映像表現を支える重要な女優の一人へと成長したのだ。
彼女の魅力は、役者としての貪欲さと、私生活における素朴な志向のギャップにもある。尊敬する女優と同じ事務所を目指したという目的意識の強さ。その一方で、農業に憧れ、自分で育てた野菜で料理をしたいと語る等身大の人間味。この二面性が、彼女の演じるキャラクターに深みとリアリティを与えているに違いない。
出演作品
| 公開・放送開始年 | 作品名 |
|---|---|
| 2026 | ミッドナイトタクシー |
| 2026 | 花緑青が明ける日に |
| 2026 | 魯山人のかまど |
| 2026 | ほどなく、お別れです |
| 2024 | ACMA:GAMEアクマゲーム ワールドエンド |
| 2024 | 劇場版ACMA:GAME 最後の鍵 |
| 2024 | 雨降って、ジ・エンド。 |
| 2024 | Cloud クラウド |
| 2024 | シサム |
| 2024 | お母さんが一緒 |
| 2024 | 海のはじまり |
| 2024 | 言えない秘密 |
| 2024 | ACMA:GAME |
| 2024 | お母さんが一緒 |
| 2024 | みなに幸あれ |
| 2023 | 幽☆遊☆白書 |
| 2023 | リボルバー・リリー |
| 2023 | 犬神家の一族 |
| 2023 | ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と |
| 2023 | スクロール |
| 2022 | アイドル |
| 2022 | 今夜、世界からこの恋が消えても |
| 2022 | メタモルフォーゼの縁側 |
| 2022 | 「第1回日本ホラー映画大賞」受賞作品 |
| 2022 | THE LIMIT タクシーの女 |
| 2022 | 前科者 |
| 2021 | 前科者 -新米保護司・阿川佳代- |
| 2021 | 春 |
| 2021 | コントが始まる |
| 2021 | 偶然と想像 |
人物エピソード・逸話
彼女が役者を目指した理由は、意外にも「無理かもしれない」という諦めに近い気持ちからだった。
古川琴音が芸能界の扉を叩いたのは、大学のサークル活動が終わり、就職という現実と向き合った時である。「無理かもしれないけど、役者をやってみたいな」。その控えめな覚悟が、後に国際的な賞賛を浴びる演技へと繋がっていくとは、当人は夢にも思わなかったに違いない。バレエで培った身体表現と、演劇部で磨いた感性が、彼女の土台を作った。
2018年、主演短編映画『春』が京都国際映画祭でグランプリを受賞。このデビュー作は合わせて9つの映画祭で最高賞を総なめにし、古川自身もTAMA NEW WAVEベスト女優賞に輝く。しかし、真の転機は2021年に訪れる。出演した『偶然と想像』がベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞したのだ。世界が認めたその演技は、かつて「無理かもしれない」と思っていた自分を、遥か彼方へと置き去りにした。
舞台では読売演劇大賞優秀女優賞を受賞するなど、活動の幅を広げているが、私生活では驚くほど地に足のついた趣味を持つ。熱心なガーデニング好きであり、「自分が作った野菜で料理をしたい」と農業への憧れまで口にする。TBSラジオを愛聴するなど、その素顔はごく自然体だ。
尊敬する女優・満島ひかりと同じ事務所に入るためだけにユマニテを受けたというエピソードは、一見すると軽い動機に聞こえる。だが、その直感が、今やNHK特集ドラマ『アイドル』での主演や大河ドラマ『どうする家康』への出演へと導いた。彼女の歩みは、ささやかな「やってみたい」が、いかに大きな物語を生むかを証明している。