あの「のぶちゃん」は、実は京の都で書道と演劇に明け暮れた異色の経歴の持ち主だった。吉岡里帆の名が全国に知れ渡ったのは、連続テレビ小説『あさが来た』で丸メガネがトレードマークの「のぶちゃん」を演じてからだ。しかし、彼女が東京のオーディション会場にたどり着くまでには、京都と東京を夜行バスで往復するという並々ならぬ決意と努力の日々があった。書道家を目指す大学生が、なぜ女優の道を選んだのか。その背景には、学生演劇で触れた熱狂と、ある大物監督の一言が大きく影響している。
基本プロフィール
| フリガナ | よしおか りほ |
|---|---|
| 生年月日 | 1993年1月15日 |
| 出身地 | 京都府京都市右京区 |
| 身長 | 158cm |
| 血液型 | B型 |
| 所属事務所 | フラーム |
| ジャンル | 女優、グラビアアイドル |
生い立ち・デビューまでの経緯
「東京に行かないとダメかな」。京都の自宅で、吉岡里帆は何度も自問した。書道家を目指して進学した大学で、彼女の心を揺さぶったのは筆ではなく、小劇場の熱気だった。18歳、学生演劇で初舞台を踏んだ瞬間、彼女の進路は決定的に変わった。
しかし、夢の舞台は遠かった。テレビも映画も、その中心は東京にある。悩んだ末に選んだのは、京都と東京を結ぶ過酷な二重生活だ。大学の講義が終わればアルバイトへ駆け出し、夜行バスで上京する。漫画喫茶で身繕いをしてオーディションを受け、再び夜行バスで京都に戻る。そんな日々を5年も続けた。費用を捻出するため、居酒屋、カフェ、歯科助手と、最多で4つのアルバイトを掛け持ちしたという。
その粘り強い努力が実を結んだのは、2015年のことだ。NHKドラマ『美女と男子』への出演がきっかけで朝ドラスタッフの目に留まり、『あさが来た』への出演が決まる。ヒロインの親友「のぶちゃん」役で、丸メガネがトレードマークの愛らしいキャラクターを熱演。そのひたむきな演技が視聴者の心を鷲掴みにしたのだ。
京都で培った芸術的感性と、東京へ向かうために積み重ねた並々ならぬ行動力。その二つが交差したとき、吉岡里帆という女優の星は、確かに輝き始めたのである。
ブレイクのきっかけ・代表作
彼女のブレイクは、まさに「落選」から始まった。2015年、連続テレビ小説『あさが来た』のヒロインオーディションで最終選考まで残りながらも落選した吉岡里帆。しかし、そのひたむきな姿が制作陣の心を動かし、「あの子に何か役をやらせたい」という声が生まれる。こうして誕生したのが、波瑠演じるヒロインを心から信奉する丸メガネの「のぶちゃん」こと田村宜役だった。この一見地味な役柄を、彼女は愛嬌と芯の強さで鮮烈に演じきり、一躍国民的な人気を獲得したのである。
その後、彼女は『ゆとりですがなにか』や『死幣-DEATH CASH-』と立て続けにレギュラー出演を果たすが、真の転機は2017年の『カルテット』だった。軽妙なコミカル演技と、時に垣間見せる孤独な表情の対比が絶妙な「巻真紀」役で、その演技力に大きな注目が集まる。この作品での評価が、彼女を単なる「愛されキャラ」から実力派女優の仲間入りを果たすきっかけとなったのだ。
京都と東京を夜行バスで往復し、4つのアルバイトを掛け持ちしてまで演劇への情熱を貫いた下積み時代。その経験が、どんな役柄にも嘘のない「生活感」と「ひたむきさ」を吹き込む源泉となっている。ゼクシィCMガールとしての清純なイメージと、役者としての幅広い表現力。この二面性こそが、吉岡里帆という女優の最大の魅力に違いない。
出演作品
| 公開・放送開始年 | 作品名 |
|---|---|
| 2026 | ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。 |
| 2026 | ダブル・ハピネス |
| 2026 | 豊臣兄弟! |
| 2025 | まつとおね |
| 2025 | イクサガミ |
| 2025 | ひらやすみ |
| 2025 | THE オリバーな犬、(Gosh!!) このヤロウ MOVIE |
| 2025 | 九龍ジェネリックロマンス |
| 2025 | 知的探求フロンティア タモリ・山中伸弥の!? |
| 2025 | 九龍ジェネリックロマンス |
| 2025 | ファーストキス 1ST KISS |
| 2025 | 御上先生 |
| 2024 | 大晦日オールスター体育祭 |
| 2024 | 正体 |
| 2024 | アット・ザ・ベンチ |
| 2024 | まる |
| 2024 | 忍びの家 House of Ninjas |
| 2023 | 怪物の木こり |
| 2023 | ゆとりですがなにか インターナショナル |
| 2023 | 時をかけるな、恋人たち |
| 2023 | 落日 |
| 2023 | Gメン |
| 2023 | アイスクリームフィーバー |
| 2023 | 神の手 |
| 2023 | ノンレムの窓 2023・新春 |
| 2023 | ノンレムの窓 2023・新春 |
| 2022 | ガンニバル |
| 2022 | 島守の塔 |
| 2022 | 監察の一条さん |
| 2022 | 京都人の密かな愉しみBlue修業中 門出の桜 |
人物エピソード・逸話
夜行バスで駆け抜けた5年間が、今の吉岡里帆を作った。彼女のキャリアは、いわば「二都物語」から始まっているのだ。
京都の大学で書道を学びながら、演劇への情熱を抑えきれずにいた吉岡は、18歳で小劇場の舞台に立つ。しかし、本格的に役者を目指すなら東京へ行かねばならない。そこで彼女が選んだのは、大学に通いながら東京の養成所に通うという過酷な二重生活だった。授業が終わればアルバイトへ直行し、その足で夜行バスに飛び乗る。上京先では漫画喫茶でシャワーを浴び、オーディションを受けてはまた京都へ戻る。この生活を5年間も続けたのである。歯科助手を含む4つの掛け持ちバイトで交通費を捻出するそのひたむきさは、後に役者としての「粘り」の強さに繋がっていく。
そんな努力が実ったのが、2016年後期の連続テレビ小説『あさが来た』への起用だった。ヒロインオーディションでは最終選考で落選したものの、その存在感は制作陣の記憶に強く残る。結果、ヒロインの親友「のぶちゃん」役を得て、丸メガネがトレードマークの愛らしいキャラクターを熱演。一気に全国的な知名度を獲得するきっかけを掴んだのである。
そして2017年、ドラマ『カルテット』での不思議な魅力を放つバイオリニスト・巻真紀役が、彼女を一躍トップ女優の仲間入りをさせた。この演技でコンフィデンスアワード・ドラマ賞やザテレビジョンドラマアカデミー賞を受賞し、エランドール賞新人賞にも輝く。その評価は映画界にも及び、2019年には『見えない目撃者』などでの演技が認められ、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。
芸能界の表舞台からは想像し難い、京都と東京を夜行バスで結んだ修羅場の日々。書道を志した文学少女が、役者への一念で二都を駆け抜けた強靭な精神が、今の彼女の深みのある演技の根底にあるに違いない。