「じぇじぇじぇ」のブームから10年、かつての国民的ヒロインは今や「俳優・アーティスト」として新たな地平を切り拓いている。『あまちゃん』の天野アキ役で一躍時代の寵児となった能年玲奈が、のんとして再出発してからも、その歩みは常に驚きに満ちていた。アニメ映画『この世界の片隅に』での圧倒的な声の演技、そして自ら脚本・監督を手がけた『Ribbon』。彼女はもはや「元・あまちゃんヒロイン」などという枠組みをはるかに超越し、ひとりの表現者として確固たる地位を築きつつある。その創作の源泉と、変わりゆく肩書に込められた覚悟に迫る。
基本プロフィール
| 生年月日 | 1993年7月13日 |
|---|---|
| 出身地 | 兵庫県神崎郡神河町 |
| 身長 | 165cm |
| 血液型 | A型 |
| 所属事務所 | 株式会社non・スピーディ(エージェント契約) |
| ジャンル | 俳優・ファッションモデル・歌手・芸術家・YouTuber・タレント |
田舎少女が「じぇじぇじぇ」で国民的ヒロインに
「じぇじぇじぇ」の流行語大賞から10年。かつての国民的ヒロインは今や俳優・アーティストとして新たな地平を切り拓いている。彼女の原点は、兵庫県の山あいの町で育った少女時代にあった。自然に囲まれた環境が、のちに「創作あーちすと」と名乗る独自の表現力の土壌となったのだ。
中学1年生の時、彼女の運命を変える出来事が訪れる。雑誌『ニコラ』のモデルオーディションに応募し、見事グランプリを獲得したのだ。都会の少女たちがひしめく世界で、田舎出身の能年玲奈はひときわ清新なオーラを放っていた。専属モデルとして活動を続ける中で、彼女の中に芽生えたのは「演じること」への強い憧れだった。
モデルとしてのキャリアを重ねながら、彼女は少しずつ演技の世界に足を踏み入れていく。映画『告白』での端役を皮切りに、小さな役柄を積み重ねた。そのひたむきな姿勢が実を結んだのは2012年、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』のヒロインオーディションでのことだ。無名に近い存在だった彼女が、全国から集まった候補者を抑えて大役を勝ち取った瞬間は、まさにドラマそのものだった。
『あまちゃん』の大ヒットは、能年玲奈を一躍国民的スターに押し上げた。しかし彼女の真骨頂は、その後の選択にこそ現れている。輝かしい成功の頂点で、彼女は「のん」として再出発を宣言する。この大胆な決断が、後の『この世界の片隅に』や監督業へとつながっていくのだから、人生とは不思議なものだ。
声優から映画監督へ『この世界の片隅に』の衝撃
「じぇじぇじぇ」の流行語大賞から、今や映画監督にまで。のんのキャリアは、決して平坦なものではなかった。
2013年、NHK朝ドラ『あまちゃん』でヒロイン・天野アキ役を演じ、一躍国民的スターとなる。その無邪気な笑顔と「じぇじぇじぇ」のセリフは社会現象を巻き起こした。しかし、ブレイクの裏には、彼女の持ち前のひたむきさがあった。薬師丸ひろ子への憧れを胸に、オーディションに挑んだのである。
その後、芸名を「能年玲奈」から「のん」に改め、新たな道を歩み始める。その転機となったのが、アニメ映画『この世界の片隅に』での主人公・すずの声優起用だ。片渕須直監督が「のんさん以外のすずさんは考えられない」と熱烈にオファーしたこの作品で、彼女は繊細かつ力強い声の演技を見せつけ、実写作品を超える高い評価を獲得する。
そして彼女は、表現者としての領域をさらに広げていく。2022年公開の『Ribbon』では、脚本・監督・主演を一人でこなし、特撮を用いた独自の映像表現で注目を集めた。女優としての評価を確立しながら、アーティストとしての顔を強烈に印象づけたのである。彼女の魅力は、常識や枠組みに収まらない、自由で果てしない創作欲にあると言えるだろう。
出演作品
| 公開・放送開始年 | 作品名 |
|---|---|
| 2026 | 平行と垂直 |
| 2026 | こちら予備自衛英雄補?! |
| 2025 | てっぺんの向こうにあなたがいる |
| 2025 | アフター・ザ・クエイク |
| 2025 | MISS KING / ミス・キング |
| 2025 | 新幹線大爆破 |
| 2025 | キャスター |
| 2025 | 地震のあとで |
| 2025 | 早乙女カナコの場合は |
| 2025 | 幸せカナコの殺し屋生活 |
| 2024 | 私にふさわしいホテル |
| 2023 | ポケモンコンシェルジュ |
| 2022 | PRIDE×ORDER-警視庁公安部 presents 狙われる日本の技術- |
| 2022 | 天間荘の三姉妹 |
| 2022 | さかなのこ |
| 2022 | 私の恋人 Beyond |
| 2022 | Ribbon |
| 2021 | 陶王子 2万年の旅 |
| 2020 | 私をくいとめて |
| 2020 | 怖い絵本 |
| 2020 | カラフル |
| 2020 | 8日で死んだ怪獣の12日の物語 -劇場版- |
| 2020 | 星屑の町 |
| 2019 | この世界の(さらにいくつもの)片隅に |
| 2019 | おちをつけなんせ |
| 2019 | のんたれ |
| 2018 | ミライさん |
| 2016 | この世界の片隅に |
| 2014 | 海月姫 |
| 2014 | ホットロード |
創作あーちすとの誕生と『Ribbon』の挑戦
彼女の目は、いつだって「まだ見ぬ何か」を追っている。のん、かつての能年玲奈が『あまちゃん』の天野アキで国民的なヒロインに躍り出たのは、今から十年以上も前の話だ。あの「じぇじぇじぇ」の流行語大賞から、彼女は驚くべき変貌を遂げた。女優から「創作あーちすと」へ、そして今や「俳優・アーティスト」として、その活動領域はとどまるところを知らない。
その変貌の象徴が、2016年のアニメ映画『この世界の片隅に』での主演声優だった。片渕須直監督が「のんさん以外のすずさんは考えられない」と熱烈にオファーしたというエピソードは有名だが、彼女がこの作品で得たのは賞賛だけではない。実写作品を対象とするヨコハマ映画祭で審査員特別賞を受賞するという、異例の事態を引き起こしたのである。アニメ声優が実写映画賞を受ける――その時、彼女の表現者としての可能性は、既存の枠組みを軽々と超え始めていた。
そして2022年、彼女は自ら脚本・監督・主演を務めた長編映画『Ribbon』で、新藤兼人賞の最終選考にノミネートされる。特撮を用いたリボンアートで主人公の内面を描くという、その独創的な手法は、もはや「元・あまちゃんヒロイン」のイメージを完全に塗り替えてしまった。彼女の内部には、役を演じるだけに飽き足らない、強い創作欲が渦巻いているのだ。
その全ての活動を肯定するかのように、2024年、第16回伊丹十三賞が彼女に贈られた。映画を中心に幅広い表現活動で新たな地平を切り拓いた者に与えられるこの賞は、彼女の歩みが単なる「転身」ではなく、「深化」であり「進化」であることを、世に示したと言えるだろう。
モデルとしてデビューし、連続テレビ小説で頂点を味わい、そして自らの手で表現の宇宙を拡張し続ける。のんという存在は、ひとつの成功に安住することを拒み、常に次の「じぇじぇじぇ」を生み出そうとしている。彼女の目が追う先には、まだ誰も見たことのない景色が広がっているに違いない。