涙を自在に操る“憑依型女優”の裏側には、壮絶な人生のドラマが隠されていた。大竹しのぶは、芸能界デビュー以来50年近く、一度も仕事が途絶えたことがないという驚異のキャリアの持ち主だ。その強さの源泉は、若くして未亡人となり、シングルマザーとして生き抜いた過去にある。
基本プロフィール
| フリガナ | おおたけ しのぶ |
|---|---|
| 生年月日 | 1957年7月17日 |
| 出身地 | 東京都江戸川区品川区 |
| 血液型 | A型 |
| ジャンル | 女優・タレント・歌手 |
生い立ち・デビューまでの経緯
「これが運命の出会いだ」。15歳の大竹しのぶは、テレビ画面に映る募集告知を目にして、そう直感したに違いない。1973年、フォーリーブスの北公次主演ドラマ『ボクは女学生』の相手役公募。何のコネもない普通の女子高生が、全国から集まる候補者の中から選ばれる確率など、極めて低かった。しかし彼女は迷わず応募用紙を手にした。
その背景には、幼少期からの幾多の環境の変化があった。父親の病気療養のため東京から埼玉へ、そして再び東京・江戸川区へ。転校を繰り返す中で培われたのは、どんな土地でもすぐに馴染む適応力と、新しい世界へ飛び込む度胸だったろう。体操部、バレーボール部とスポーツで鍛えた身体は、未知の舞台にも屈しない強さを秘めていた。
オーディション会場で彼女が放ったのは、おそらく既成の「女優志望」とは違う、どこか野生に近いオーラだったに違いない。結果は合格。ここから、日本の芸能史にその名を刻む長い長い旅が始まる。たった一度の公募が、すべてを変えたのだ。
ブレイクのきっかけ・代表作
「人にかけたら死ぬかな~」と殺虫剤を夫に向けて噴射したという、とんでもないエピソードの持ち主だ。大竹しのぶの魅力は、この型破りなエキセントリシティと、一転して深い闇を宿す圧倒的な演技力の二面性にある。
彼女のブレイクの契機は、1973年、フォーリーブスの北公次主演ドラマ『ボクは女学生』の一般公募に合格したことだ。しかし、単なるアイドルデビューでは終わらなかった。その後、NHK連続テレビ小説『水色の時』や大河ドラマ『花神』への出演を経て、清新なイメージを定着させる。真の転機は、1987年に『ひらけ!ポンキッキ』で歌った「かまっておんど」が、予想外の年齢層を巻き込み社会現象となったことだろう。幼児向けの枠を軽々と超え、彼女の持つ不思議な親和力とキャラクターの幅を世に知らしめた。
代表作として外せないのは、何と言っても1987年の『男女7人秋物語』だ。この作品で、奔放で危うげな魅力を放つヒロインを演じきり、一躍トレンディードラマの旗手となる。その演技は「憑依型」と評され、深い情感をたたえた役柄を演じさせれば天下一品と言われる所以だ。その後も『元禄繚乱』のりく役など、歴史ドラマから現代劇まで、常に作品の核となる存在感を示し続けている。
芸能界デビュー以来、仕事が途絶えたことがないというのは、彼女の稀有な才能と生命力を物語っているに違いない。
出演作品
| 公開・放送開始年 | 作品名 |
|---|---|
| 2025 | 黒川の女たち |
| 2025 | 喫茶しのぶ |
| 2024 | 海のはじまり |
| 2024 | わたくしどもは。 |
| 2023 | 君たちはどう生きるか |
| 2023 | 犬神家の一族 |
| 2022 | PICU 小児集中治療室 |
| 2022 | ヘルドッグス |
| 2021 | 岬のマヨイガ |
| 2021 | 漁港の肉子ちゃん |
| 2020 | 世にも奇妙な物語 '20秋の特別編 |
| 2020 | 劇場の灯を消すな!Bunkamuraシアターコクーン編 |
| 2019 | 影踏み |
| 2019 | いだてん〜東京オリムピック噺〜 |
| 2018 | Tokyo 2001/10/21 22:32~22:41 |
| 2018 | のみとり侍 |
| 2017 | ごめん、愛してる |
| 2017 | メアリと魔女の花 |
| 2016 | 真田十勇士 |
| 2016 | 後妻業の女 |
| 2015 | ギャラクシー街道 |
| 2015 | 海街diary |
| 2015 | トイレのピエタ |
| 2015 | アイアングランマ |
| 2014 | 「昭和の歌よ、ありがとう」One Night Premiere LIVE |
| 2013 | 風立ちぬ |
| 2013 | 旅立ちの島唄~十五の春~ |
| 2013 | つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語 |
| 2012 | 女たちの都~ワッゲンオッゲン~ |
| 2012 | ふくすけ |
人物エピソード・逸話
あの「瞬時に涙を流す」演技の裏側には、常人離れしたエピソードが隠されていた。
大竹しのぶは、芸能界で「憑依型」と称される圧倒的な演技力の持ち主だ。撮影現場では必要とあれば一瞬で涙を湛えることができるというが、本人は「演技派女優」と呼ばれることをひどく嫌っている。その言葉通り、彼女の人生そのものが、役作りを超えた強烈なリアリティに満ちている。
1973年、フォーリーブスの北公次主演ドラマ『ボクは女学生』の一般公募でデビューして以来、仕事が途絶えた時期は一度もない。テレビドラマから大河ドラマ、そして『ひらけ!ポンキッキ』の挿入歌『かまっておんど』が予想外の大ヒットを記録するなど、その活躍は多岐にわたる。1987年にガンで最初の夫を亡くした悲劇を経て、明石家さんまとの再婚と離婚を経験。しかし驚くべきは、離婚後もさんまや娘のIMALUと家族として良好な関係を築き続けている点だ。家族で集まってパーティーを開くほどなのだから、芸能界でも稀有な関係性と言えるだろう。
そんな彼女の人間味を象徴するのが、何とも抜けたエピソードの数々である。なんと、よく自分の車と間違えて他人の車に乗り込んでしまう癖があり、共演した松岡茉優の車にうっかり入ろうとしたこともあるという。また、娘のIMALUからは「話を盛る癖がある」と指摘されるなど、天才女優のイメージからは想像できない親しみやすい側面を持っている。
芸歴の長さはもちろん、その深みは数々の受賞歴が物語っている。『青春の門』でのブルーリボン賞新人賞、キネマ旬報ベスト・テン助演女優賞、日本アカデミー賞優秀助演女優賞をはじめ、NHK-FMのドラマで芸術祭賞やギャラクシー賞を受賞。2016年には第67回NHK紅白歌合戦に初出場を果たし、2021年の東京オリンピック閉会式では「星めぐりの歌」を歌唱するなど、常に日本の芸能史の中心に立ち続けている。
しかし、最も印象的なのは、彼女の「危うさ」を感じさせる逸話かもしれない。明石家さんまによれば、結婚当時、庭で殺虫剤を撒いていた大竹が突然「これ、人にかけたら死ぬかな~」と言いながらさんまに向けて噴射したという。この一見危険ですらあるエピソードに、彼女の芸術家としての特異性が凝縮されているように思えてならない。