菊間千乃 転落

 1998年(平成10年)9月2日、フジテレビ系「めざましテレビ」の生放送中に前代未聞の衝撃的な事故が発生した。中継コーナー「それ行け!キクマ」を担当する同局の菊間千乃アナ(当時)が地上13メートルの高さから落下したのである。

 この日の企画は火災などの災害時に高所から脱出する避難器具の体験レポート。東京都足立区谷在家のマンションで撮影が行われ、「セイフリー・ダウン」という「簡易緊急降下機」を使い、菊間アナが5階の窓から地面に降りるという内容だった。

「セイフリー・ダウン」を販売するケネディ・インターナショナル社の代表者の同行のもと、同日午前7時25分過ぎからスタートしたコーナー。本来は菊間アナの腰に結びつけた幅3センチのヒモを部屋内のソファーと連結し、フックをかけた上で、器具の滑車を利用して地面に下りる予定だった。

 VTRをもとに放送の模様を振り返ってみよう。

菊間アナ:高いんですよ。見て、これ5階です。15メートル。ギャラリーの皆さんもすごい沢山いますけれど。

※菊間アナ、窓にまたがる。社長、ロープを調整する。

社長:乗用車吊っても切れませんから。

菊間アナ:大丈夫ですか?あのね、持つところが何もないじゃないですか。

社長:ぶら下がるだけで。

大塚範一アナ(スタジオ):何か命綱が欲しいぐらい。

※菊間アナ、窓外に足を出し落下体制に入る。

小島奈津子アナ(スタジオ):本当に気をつけてね。

菊間アナ:大丈夫ですか?何かカチャカチャ。

社長:大丈夫。

小島アナ(スタジオ):見ておくと災害のときにね。

大塚アナ(スタジオ):どうするの?それでどうするの?

小島アナ(スタジオ):ちょっと待って、ちょっと待って。

菊間アナ:行きますよ!キャー!

社長:大丈夫、大丈夫。

菊間アナ:行きますよ!せーの、キャー!

※菊間アナ、約13メートル下のウレタンマットに落下

大塚アナ(スタジオ):え?外れちゃったいま。
 
小島アナ(スタジオ):アハハ、そうなんだ、外れちゃった。(沈黙の後)菊間ちゃん、菊間ちゃん。えっ大丈夫?

 菊間アナの落下事故が発生したのは午前7時28分。地上に設置された黄色のウレタンマットに落下した後、菊間アナは微動だにしなかったが、予期せぬ事故にスタジオの大塚範一アナと小島奈津子アナ(当時)も当初は深刻さを飲み込めなかった様子がVTRから窺える。

 その後、番組終了直前の午前7時55分に大塚アナが「先ほど『それ行け!キクマ』のコーナーでNASAが作った命綱の実験をした菊間さん、ちょっと途中で落ちて心配されましたけれども、意識はしっかりしておりまして、大変に皆さんにご心配おかけして失礼しました」と謝罪。「今後とも危険のないように注意する」と神妙に語った。

 視聴者に衝撃を与えた菊間アナの事故。結果、彼女は腰椎を圧迫骨折したほか、胸椎、肋骨を含め全身の6ヶ所を骨折。リハビリに1年を要する全治3ヶ月の重傷を負った。

 後年、彼女本人が長野智子との対談で「次の記憶はICU(集中治療室)の中で酸素マスクを苦しいと思って外したときです」と落下時の記憶がなかったことを明かしている。

 事故後、1999年1月の「発掘!あるある大事典」でギプスを着けた姿で復帰した菊間アナは2007年末に同局を退社。

現在は弁護士に転身、ラジオパーソナリティの仕事もスタート

 2010年に司法試験に合格したことで弁護士に転身し、その後はTBS系「ビビット」などでコメンテーターとしても活躍。2019年4月からは自身初のラジオパーソナリティの仕事となる文化放送「菊間千乃・ゼンブライフ」がスタートした。

 メディア以外では日本バレーボール協会の評議員に選出されたほか、文科省中央教育審議会法科大学院特別委員会専門委員、株式会社コーセー社外取締役を務めるなど、年々活動の幅を広げている。

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