上岡龍太郎「芸人とヤクザ」論に込められた「正反対の思い」とは
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 2000年に58歳で芸能界を引退した上岡龍太郎が「闇営業問題」で再び脚光を浴びている。かつて上岡が番組内で語った「芸人と反社会的勢力」論が「的確すぎる」として再評価されているのだ。

 上岡の“至言”が発せられたのは1989年10月20日に放送された「鶴瓶・上岡パペポTV 」(読売テレビ制作)。この日の放送では、共演者の笑福亭鶴瓶が遅刻。冒頭の3分間、上岡が単独トークを繰り広げた。

 当時の同番組VTRから上岡の「芸人と反社会的勢力」論を全文転載する。

上岡龍太郎が語った「芸人とヤクザ」

「今日は鶴瓶がまだ来てません。(※タバコに火をつける)そもそもね、芸人が時間に遅れるなんてことはね、ぼくらこの世界入ったとき言われましたよ『とにかく時間に遅れる芸人は最低や』てね。そうは思わんですけどね。時間通りきっちり行ったり、毎日決まったとこにかならず行くって奴は芸人になりませんからね。そんなことできん奴が芸人になってるんで」

「芸人ちゅうんはなんや言うたら、落ちこぼれ人間ですよ。社会のはみ出しもん、アウトロー、いわば暴力団と一緒ですから。我々とヤクザは一緒。そやからあの、芸人とヤクザが癒着したらいかん言うけどウソあんなもん。根が一緒やから癒着もなにも、もともと同じタイプの人間やからね」

「できるだけ楽したい、ね。みんなと一緒のことはしたくない。そや言うて、ちやほやして欲しい、お金はようけ貰いたい。ほとんどこういう考えの人間が芸人とヤクザになるんですね。ただ、向こうは腕が達者でこっちは口が達者やったいうだけでね。上へ生えてる木が違うからみんな違うもんや思うけど根は同じですから。我々芸人の言うこと聞いて、『へえ』とか『なるほどなあ』とか、そういうことを一般の人は言う必要ないんですね。『ふんバカが』と、こう思うてりゃええ」

「だけどこのごろあの、我々でもテレビなんかで言うと、『そうだ、まったくその通りだ』『やあ、いいことを言う』とかね。(上岡のツバがかかった観客に対して)人のツバは気にしない。どうも、世の中がね。たとえば政治家、宗教家、教育者、実業家。こういう人らがきちっとしてれば我々苦労することなかった。我々は好きなように、相変わらず酒飲んで女抱いて博打して過ごせたのに、あいつらが総崩れやからね。あの責任が全部こっちきてしもてん。で、テレビ出る芸人は、芸人といえども一般人としての良識を持て。良識があったら芸人になってないちゅうんやけどね」

「政治家とか実業家とか宗教家とか教育者に代わってこっちが『いや、皆さん一生懸命やりましょう、真面目はいいことです』って言わないかんようになったんじゃ情けない世の中です。あの辺がしっかりしてくれたら私らも楽になるんやけどね」

 カラテカ入江や宮迫博之らが反社会的勢力の忘年会に出席していた闇営業問題や、島田紳助の暴力団関係者との交際による電撃引退を「“予言”していた」とも感じさせる内容だが、上岡の「芸人とヤクザ」論の背景には「正反対の思い」があった。

宮迫博之とカラテカ入江 “闇”のツーショット写真

「芸人はヤクザと距離を置かねばならない」

「上岡さんは『芸人はキッパリとヤクザと距離を置かねばならない』と考えていたんですよ」と語るのは往年の上岡をインタビューしている芸能記者歴40年の増川稔久氏。

「『芸人とヤクザは根は同じ』と指摘する一方で『テレビ番組のスポンサーである企業の宣伝費で食べさせて貰っている以上、ヤクザと付き合っていたらアカン』とも語っていました。上岡さんは当時としては先駆的な『アンチ反社』のスタンスを持っていたがゆえに、逆説的な『芸人とヤクザ』論を度々展開していたのでしょう。間違いなく、数十年前から今回の闇営業問題のような事態が起こることを危惧していたはずです」

 つくづく重みのある上岡の言葉である。

(大倉さとみ)

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