
「定年後にどうやって生活費を稼げばいいのか?」――。こんな悩みを抱えた50代、60代のための本が刊行された。タイトルは『年金だけじゃ生活できない!「定年バイト」奮戦記』(秀英書房)。著者の林山翔平氏は現在66歳。営業職を勤めた会社を定年退職してさまざまな業界のアルバイトに応募。面接を受け、実際に働いてみた。果たして「定年バイト」は天国か、それとも地獄なのか。その実態を語ってもらった。
――60代、70代のバイト探しを一言で表現すると、どのようなものですか?
「簡単に言うと『いばらの道』です。私はマンションの管理人やホテルのバー、居酒屋の洗い場、カラオケボックスなど数十社で面接を受け、その大部分で不合格の通知を受け取りました。勝率は10%前後です」
――テレビや新聞によると、現在の日本は深刻な人手不足。売り手市場ではないのですか?
「人手不足は事実ですが、それは若者を中心にした現役世代のこと。60歳以上になると体の動きも悪いし、腰が痛くて重い物を持てない。ずっと働き続けるのは無理。レジなどの難しい操作を覚えるのが一苦労。こうしたことから採用側は『どうせ雇うなら若者のほうがいい』と考え、シニアを排除します。人手不足だから売り手市場というのは都市伝説だと肝に銘じてください」
――本のオビに「60代のバイト探しはプライドがズタズタ!」とありますが……。
「脅しではなく、本当にプライドが傷つきます。自分の孫くらいの面接官に頭を下げる。せっかく面接に行ったのに、先方は60代を採用する気は毛頭ない。『あなたは本当に健康ですか?』としつこく質問される。めでたく採用されても、18歳の女性社員から説教される。どれもこれも気分が落ち込みます。定年バイト探しは心底覚悟しないとメンタルをやられますよ」
――慢性的に人手不足のバイトもあるのでは……?
「たしかにあります。ただし、なかにはマイナス面を抱えた仕事もあるので注意が必要です。たとえば飲食店の深夜ワンオペ勤務。若者はもっと楽でオシャレな仕事を希望するから深夜ワンオペを敬遠する。そのため60歳以上にチャンスが回ってきますが、ここに落とし穴があるのです。数年前、名古屋で女性が死亡した事故もあり、実は高齢者もやりたがらない。時給などの待遇はいいものの、深夜の定年バイトは命がけなのです」
――面接を受ける際の注意点は?
「同じ業種でも、なるべく複数の会社を受けて一番労働条件が良いところを選ぶべきです。たとえば比較的採用されやすい警備業界。私が経験した3時間も4時間も直立不動で立ちっぱなしの仕事もあれば、40分ごとに20分休める仕事もある。疲労度が格段に違います。まさに『天国と地獄』。時間がかかってもいいから、自分に合った仕事を探さないと身も心も擦り切れてしまいます」
――本の中にも書かれていますが、遠距離通勤は避けたほうがいいですか?
「60代、70代になると体の無理が利きません。片道1時間半もかけて仕事先に着いたら、それだけで疲労困憊です。私も経験しましたが、夜勤明けに満員電車で遠距離を帰るのは本当につらい。立っていられません。夜勤の場合はなるべく自転車で通える距離の職場を選んでください」
――厳しい現実のなか、「採用」を獲得する方法はありますか?
「あります。まずは自分のルックスを磨き、どんな言動が面接官を引きつけるかを考える。各業界がどんな人材を求めているかを調査。このように事前の研究をバッチリしていれば合格率がグンと上がります。すると複数の会社の中から好条件のところを選ぶことができる。結果的に5年、10年と楽しみながら従事できる高収入のバイトを見つけることができるのです」