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山下達郎「クリスマス・イブ」はJR東海CMの書き下ろしではなかった! 夏のアルバムから「6年後の首位」へ

クリスマスの定番曲を全国へ届けたJR東海のCM。楽曲は、その企画より何年も前に世に出ていた。

山下達郎「MELODIES」30周年記念盤ジャケット
山下達郎「MELODIES」30周年記念盤ジャケット(画像はワーナーミュージック・ジャパン公式サイトより)
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 冬の駅、新幹線、待ち合わせる恋人。山下達郎の「クリスマス・イブ」は、JR東海のCMの映像と一緒に記憶している人も多い。あまりに相性がいいため、あの物語のために作られた曲だと思っていても不思議ではない。

 ところが、曲が世に出たのはCMよりも前で、しかも最初の舞台は夏に発売されたアルバムだった。季節の定番になるまでには、数年の時間と、既存曲を選び抜いた制作側の判断があった。

「クリスマス・イブ」は1983年のアルバム収録曲だった

 山下の公式年譜と作品情報によると、クリスマス・イブは1983年6月発売の「MELODIES」に収録された。同年12月にはシングルでも発売されている。JR東海のCMに初めて使われたのは88年だから、曲そのものには5年の先行期間があったことになる。

 CMとの出会いがなければ存在しなかった曲、というわけではない。すでに山下の作品として聴かれていたものが、後から映像の中へ招かれたのだった。

 そして、シングルが初めて週間チャートの首位に立ったのは89年。発売から6年を経ての到達だった。発売直後の勢いで一気に売れた曲とは違う。曲を作った年、CMに使われた年、首位になった年を並べるだけでも、人気が広がった時間の厚みが見える。

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CM演出家が定番曲よりも「達郎の曲」を推した

 では、どうしてこの既存曲が選ばれたのか。CMの演出を手がけた早川和良は、2023年にTOKYO FMの番組で、その経緯を語っている。初めから山下の曲ありきの企画だったわけではなく、当初は広く知られたクリスマスソングを使う案があったという。

 そこへ早川が、クリスマス・イブを使いたいと提案した。曲に合わせた絵コンテを用意して説明し、依頼主にも音楽を聴いてもらった。よく知る季節の歌を当てるのではなく、この曲と映像を組み合わせることを選んだのである。

 映像に合う歌詞を新しく注文したのではない。すでにある曲の雰囲気や時間の流れを受け取り、それにふさわしい場面を考える。曲がCMの付属物ではなく、物語を動かす材料として扱われたところが大きい。

 その結果、聴き手には音だけで駅の情景まで浮かぶような結びつきが生まれた。楽曲と広告のどちらが先だったかを忘れてしまうほどの一体感は、最初から同時に作ったから生まれたのではなかった。

 既存曲の起用なら、たまたま映像に合う歌を見つけただけと思われるかもしれない。しかし、曲の中にどんな映像を見いだすかも、制作側の仕事だ。発売済みの作品へ新しい入口をつくることで、聴く人の数も、聴かれる場面も変わった。

 夏に世へ出た曲が、何年もかけて冬の風景になった。クリスマス・イブは、CMのために生まれたのではない。CMとの出会いで、もう一度、新しい聴き手のもとへ届いたのである。

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