アンパンマンの原型は人間のおじさんだった やなせたかしさんが考えたパンの顔
アンパンマンの原型は、1969年の短編童話に登場した人間のおじさんだった。あんパンを配って空腹の人を助ける主人公が、やがてパンの顔を持つヒーローへ。やなせたかしさんは、その発想と自身の戦争体験のつながりを語っていた。

アンパンマンといえば、あんパンでできた顔を空腹の人に分けてあげるヒーローだ。しかし、やなせたかしさんが描いた原型は、人間のおじさんだった。パンを配る人物から、パンの顔を持つ主人公へ。そこには、やなせさん自身が語った発想の変化がある。
あんパンを配るおじさんから、パンの顔へ
原型となる『アンパンマン』は、1969年に発表された短編童話だ。やなせさんが50歳の時だった。この主人公は、貧しさから十分に食べられない子どもたちに、あんパンを届ける人間として描かれていた。
生前の本人インタビューで、やなせさんは、幼い頃に好きだった食べ物があんパンだったと説明している。初めはそれを配るおじさんを主人公にしたが、パンそのものが空を飛ぶ方が面白いと考え、あんパンの顔をした人物へと姿を変えたという。
食べ物を届けるという行為には、戦争の経験が重なっていた。記念館の財団関係者が語ったところでは、やなせさんは出征先の中国で飢えを経験し、敗戦によって、それまで教えられてきた正義の意味が反転することにも直面した。そこから、時代や立場が変わっても揺らがない正義を考え、空腹の人へパンを差し出す行為に答えを見いだしたという。
顔を分ける設定にも、やなせさんの正義への考えが反映されている。自分も傷つく覚悟が正義には伴うとの思いを、主人公が顔を食べさせて人を救う設定に込めたと、生前の取材で説明していた。
1973年、ひらがなの『あんぱんまん』が絵本に
子ども向けの絵本として登場したのは1973年。54歳になったやなせさんの『あんぱんまん』が、月刊絵本の10月号に掲載された。タイトルがひらがななのは、幼い子ども向けの本だったためだ。1969年の短編童話から、4年を経てのことだった。
この絵本は幼稚園や保育所で子どもたちに届けられた。発行元の説明では、繰り返し読まれて傷んだ本が、多くの園にあったという。やなせさんも、当初は編集者や評論家に評価されなかった作品を、子どもたちが支持してくれたと振り返っている。
1973年の『あんぱんまん』は、1976年に市販の絵本としても刊行された。さらに、やなせさんが69歳になった1988年には、『それいけ!アンパンマン』がテレビアニメとして放送を開始した。
