高橋一生は『耳をすませば』の天沢聖司だった 声変わり直前に残された14歳の声
『耳をすませば』で天沢聖司を演じたのは、公開当時14歳の高橋一生。収録直後に始まった声変わりと、いったん離れていた芝居に戻るきっかけとなったオーディションの経緯をたどる。

『耳をすませば』の天沢聖司は、高橋一生が声を演じていた。1995年7月15日に公開されたこのアニメ映画で、高橋は当時14歳。大人になってからの落ち着いた声とは違う、少年の声を残している。しかも、その収録は声変わりが始まる直前だったという。
収録から約1週間後に始まった声変わり
2019年に公開された『金曜ロードショー』の公式解説によると、高橋の声に変化が現れたのは、収録のおよそ1週間後。あの声は、大人の俳優が少年らしく作ったものではなく、本人がまだ声変わりを迎える前の声だった。
同じ解説には、監督の近藤喜文さんが声の配役で重視した点も紹介されている。普段の会話のように自然に演じられることに加え、その年齢の本人から伝わる雰囲気も大切にしていたという。少年の役を同世代の高橋が担ったことは、こうした作品づくりの方針とも重なる。
一方、年齢が近ければ簡単に演じられるわけでもない。高橋は声を入れる前の役作りに苦労したとも紹介されている。年相応の声を持つことと、聖司という人物を表現すること。その両方が必要な仕事だった。
辞めた劇団から届いたオーディションの誘い
出演までの道のりにも意外な経緯がある。高橋は2026年4月公開のインタビューで、子どもの頃に通っていた児童劇団を一度辞め、芝居から離れていた時期があったと振り返っている。その劇団から中学3年生の時に届いたのが、アニメ映画のオーディションへの誘いだった。
受けてみたものの、最初の連絡は不合格。それから約1週間後、改めて来てほしいと呼ばれた。そこで見せられたのは、以前より高橋の雰囲気に近づけたという映像で、出演を頼まれたのだという。後に聖司の声として知られることになる配役は、一度の合格通知で決まったわけではなかった。
久しぶりの芝居で高橋が見いだしたのは、自分を前面に出すこととは違う表現の道だった。他の人物を演じるという仕事なら、自分にもできることがある。本人はこの作品との出会いがなければ、演技から離れたままだったかもしれないと語っている。
声変わり前の記録であると同時に、俳優を続けるきっかけにもなった一本。聖司の声には、高橋自身の節目が残っている。
