唐沢寿明はスーツアクターから出発した 顔の出ない役で磨いた俳優の原点
唐沢寿明の俳優人生は、スタントやスーツアクターの仕事から始まった。先輩の動きを見て学んだ日々と、映画『イン・ザ・ヒーロー』で振り返った自身の原点。本人の言葉に、その経験が残っている。

ドラマや映画で主演を重ねてきた唐沢寿明は、若い頃、スタントやスーツアクターとして働いていた。特撮の衣装に身を包み、顔を見せずに動きで役を演じる仕事だ。本人は後年、その時代の経験が俳優としての自分を支えていると語っている。
戦闘員役と殺陣の練習から始まった日々
2025年10月公開のインタビューで、唐沢は東映の撮影所で駆け出しのスタントマンだった頃を振り返った。特撮シリーズでは戦闘員も演じ、宙返りや殺陣の練習を繰り返していたという。作品の中で派手に動く人物を、体を使って成立させる側にいた。
その頃の学び方は、先輩や指導者の動きをよく見て、自分で吸収していくというものだった。ただ見ているだけではなく、上手な人はなぜそう動けるのか、自分ができるようになるにはどうすればよいかを考える。本人が強調したのは、観察を実践につなげる姿勢だ。
『イン・ザ・ヒーロー』で再び向き合った原点
こうした経歴と重なる役を演じたのが、2014年9月公開の映画『イン・ザ・ヒーロー』だった。唐沢が演じる本城渉は、顔を出して映画に出演することを夢見るベテランのスーツアクター。長くその仕事を続けてきた男に、大きな挑戦の機会が訪れる物語だ。
公開時のインタビューで唐沢は、登場人物や現場を支えるスタッフの気持ちまで理解できる題材だったと話している。主人公を演じる感覚は、自分自身を演じることに近かったという。若い頃の仕事を映画の役として経験し直すことで、当時の時間を肯定的に振り返っていた。
実際の撮影でも、宙返りや高所からの飛び降りなどに取り組んだ。ただ、若い頃と同じ感覚で動けばけがにつながるため、体の変化には注意したという。以前はできた技が難しくなっていることもあり、経験だけで押し切れる仕事ではなかった。
それでも、この現場にはうれしい再会があった。スーツアクター時代に一緒に仕事をした人たちと、スタッフも含めて再び顔を合わせたのだ。主演俳優として戻った撮影現場に、かつての仲間もいた。顔の見えない役を演じた日々は、唐沢の仕事につながっていた。