『涙そうそう』に森山良子が込めた兄への思い BEGINの曲から広がった歌
森山良子が『涙そうそう』の詞に込めたのは、亡き兄への思いだった。BEGINから届いたメロディーと仮題、そして歌の背景を知った夏川りみの録音を結ぶ物語。

『涙そうそう』の詞を書いた森山良子は、この歌を亡くなった兄への思いから生み出した。作曲したのはBEGIN。夏川りみの歌声でも広く知られる曲には、作る人と歌う人が、それぞれの立場で向き合ってきた時間がある。
森山の公式ディスコグラフィーでは、1998年11月発売のアルバム『TIME IS LONELY』に『涙そうそう』が収められている。夏川がこの歌を発売したのは2001年。夏川の代表曲として出会った人にとっても、その前に森山とBEGINによる制作があったことは、歌の成り立ちを知る手がかりになる。
仮題の付いたカセットテープから
2021年に掲載されたインタビューで、BEGINの比嘉栄昇は、森山のラジオ番組の周年企画で曲を共に作ることになったと振り返っている。比嘉は森山が歌うことを思い描き、メロディーをカセットテープに録音した。まだ詞はなく、最後だけに『涙そうそう』という言葉を入れ、仮題にもその名を添えて渡したという。
そこに森山自身の記憶が重なった。所沢市民文化センターのインタビューで森山は、兄を亡くしてからかなり時間がたってこの詞を書いたことを明かしている。心の奥にしまってきた感情を言葉にしたもので、自らの実体験や心情が曲のもとになっていた。
比嘉の記憶にも、その思いに触れた場面が残っている。詞が付いた後、BEGINの3人と森山が初めてリハーサルをした際、森山は涙ぐんでいた。比嘉はその様子から、歌を通じて何かが起きていると感じたという。
夏川りみも録音中に知った背景
夏川は2000年、テレビでBEGINが歌うこの曲を聴いて、自分も歌いたいと強く願った。2022年に公開されたインタビューでは、後のレコーディングで当初は沖縄の青空を思い浮かべて歌っていたと話している。そこで比嘉から、森山の兄への思いが詞に込められていると教わった。
夏川は一度録音を止めてもらい、詞を読み返してから歌い直した。完成したCDを森山のもとへ届けると、たくさん歌ってほしいと声をかけられたという。それが、多くの人へ届けたいという気持ちにつながった。
森山が詞にした兄への思いは、歌う人にも受け止められ、聴き手のもとへ届いていった。