『残酷な天使のテーゼ』は難しく書いてと頼まれた 及川眠子が決めた詞の視点
『残酷な天使のテーゼ』の難解な言葉には、制作側からの注文があった。及川眠子が語ったタイトルの発想と、高橋洋子に合わせた詞の視点。

高橋洋子が歌う『残酷な天使のテーゼ』は、1995年に始まったアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のオープニング曲だ。題名からして一度では意味をつかみにくいが、その難しさは制作側から望まれたものだった。作詞した及川眠子は、難解に書くよう依頼されたことを明かしている。
2018年刊の作詞の教則本では、その注文を具体的に振り返った。一度聴いてすぐ理解できるものではなく、何度も聴いたときに心が動き、涙が出るような詞にしてほしい。哲学的な要素も求められたという。単に分かりにくい単語を並べる、という話ではなかった。
歌う高橋洋子から考えた女性の視点
作詞の時点では、アニメはまだ完成していなかった。及川が受け取ったのは企画書と、未完成の映像2話分。企画書に目を通し、映像を早送りで見ながら、14歳の主人公や周囲の人物の関係をつかんだ。物語の結末まで見届けてから書いた詞ではない。
そこに、歌うのは高橋洋子だという情報が加わる。及川は、大人の女性である高橋が14歳の少年の気持ちをそのまま歌うより、母親や年上の女性の立場から語る方がよいと考えた。2019年のラジオ番組『STEP ONE』でも、歌い手を踏まえて詞の視点を決めたと説明している。
題名の手がかりは仕事場の本棚に
印象的な題名にも、具体的なきっかけがあった。仕事場で目に入ったのが、萩尾望都の漫画『残酷な神が支配する』。その題名にある「残酷」という言葉が気になり、歌詞を書く前に曲の仮題を決めたという。難しげなアニメの題名に合わせ、曲名にも画数の多い言葉を使いたいと考えていた。
一方、歌詞にアニメのタイトルを入れる必要はなかった。及川が制作側に確認すると、入れなくてよいという返事だったという。本人は、この選択が作品を離れても聴ける歌につながったと捉えている。
及川は別のインタビューで、自分らしさを優先するより、依頼に応えられることを職業作家の役割として語っている。この曲では、もともと好んでいた凝った表現と、求められるものを書く仕事の姿勢が合ったと振り返った。
難しさの中にも、注文と歌い手を見据えた判断があった。