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ニューオールドメディア

『ゴジラ-1.0』の鳴き声には古いサイレンの音 初代の恐さを残すための試行錯誤

『ゴジラ-1.0』の咆哮には、初代の声に昭和のサイレンなどを重ねた工夫がある。音響効果を手がけた井上奈津子は、音を作るだけでなく、野球場で実際に鳴らして反響まで録音していた。

2023年の東京国際映画祭で眼鏡をかけ、青い上着を着ている山崎貴監督
出典:Wikimedia Commons/山崎貴監督(2023年・東京国際映画祭) 撮影:Dick Thomas Johnson CC BY 2.0(切り出し版を縮小表示・左右に余白) 原写真:Yamazaki Takashi from "Godzilla Minus One" at Red Carpet of the Tokyo International Film Festival 2023
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 映画『ゴジラ-1.0』の鳴き声には、昭和に録音された古いサイレンが使われている。初代ゴジラの声を土台に、別の音を重ねて仕上げたものだ。2024年の映像・音響機器の展示会で、音響効果を担当した井上奈津子が制作の経緯を語っている。

 山崎貴監督が求めたのは、初代の声が持つ怖さを残しながら、現代の音響設備に合う音にすることだった。ところが、保存されていた音源には傷みの進んだ部分もあった。そのまま使うだけでは足りず、どのような音を補えばよいのか、試行錯誤が始まった。

試したコントラバスの音は不採用に

 動物の声を加えると、ゴジラらしさより恐竜のような印象が強くなる。井上はコントラバスも用意し、弦のこすり方などを変えながら音を作った。ただし、この試作の音が、そのまま完成版に使われたわけではない。自作した鳴き声は採用されず、どんな音が元の声になじむかを知る経験になったという。

 そこで役立ったのが、古いサイレンの録音だった。鳴き声の後半に響きが残る部分とうまく重なったという。さらに、喉が荒れたような質感の音も足した。初代の声を別物に取り替えるのではなく、響きや質感を補うことで、この作品のゴジラの声にしていった。

野球場でゴジラの声を鳴らした理由

 音を組み合わせる作業だけで完成したわけでもない。井上たちはZOZOマリンスタジアムでゴジラの声を再生し、その響きを録音した。2025年1月のインタビューで井上は、屋根に覆われず、周囲を囲まれた静かな場所がほしいと、録音担当の竹内久史らに相談した経緯を話している。

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 球場を使えたのは、選手の自主練習の合間の2時間だった。収録する鳴き声は2種類。限られた時間にスタッフが協力し、音を鳴らす場所の空気ごと記録する作業になった。録れたのは、機材の中だけで加工していた段階とは異なる響きだった。

 井上によると、録れた音には空気のうなりや遠くの工場の音も混ざっていた。整った残響を加えるだけでは得られない、生の空間を伝わった響き。それが怪獣の声に合うと感じたという。ノイズをすべて消して澄んだ音にすることが、今回の狙いではなかった。

 古い声を残すために新しい音を探し、実際の空間でも鳴らす。その積み重ねが、ゴジラの咆哮を支えていた。

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