『スプラトゥーン』の試作は豆腐から始まった 隠れる遊びがイカにたどり着くまで
イカが活躍する『スプラトゥーン』の原型では、白と黒の立方体がインクを塗り合っていた。姿を隠す仕組みと、人の形で動く楽しさを両立するまでには、ウサギの案もあった。

『スプラトゥーン』の開発初期、インクを塗り合っていたのはイカではなかった。白と黒の、豆腐に似た立方体だったという。食品を主人公にした設定があったという意味ではなく、遊びを確かめる試作品の形をそう呼んでいた。まずあったのは、インクで陣地を広げる対戦の仕組みだった。
任天堂公式の開発者インタビューでは、プログラムディレクターの佐藤慎太郎がつくった試作が原型だったと説明されている。プロデューサーの野上恒によると、その段階で4人対4人の対戦ができ、相手の動きを読みながら塗る面積を広げる面白さがあった。
豆腐の姿なら同じ色に隠れられた
試作で大切だったのは、相手に居場所を知られずに隠れることだ。同じ色のインクの上に立方体が乗ると、真上から見たマップでは見分けがつかなくなる。ただ、立体的な画面では姿が見えるため、後から伏せる動作も加えた。インクを塗ることが、身を隠す行動にもつながっていた。
ところが、見た目を手足のある人型に変えると、マップ上で姿がうっすら見えるなど、遊びの核が揺らいだ。そこで試されたのがウサギだった。アートディレクターの井上精太は、白い体なら付いたインクがわかりやすく、長い耳で動きや向きを表せる利点があったと話している。
二つの姿に役割を分ける
それでも、なぜウサギがインクを塗るのかを説明しきれなかった。ディレクターの阪口翼は、見た目や武器、動作に求める条件を整理。その中には、インクを出すことに納得できる題材として、イカも挙がっていた。ただし、イカの案自体は、それ以前から候補にあったという。
前に進むきっかけは、一つの姿にすべてを担わせず、インク状の姿と人の姿を切り替える考えだった。インク状なら同じ色の中で見えなくなり、速く移動できる。人の姿ならインクを発射し、服装を変える楽しみも持たせられる。それぞれの姿でできることを分けていった。
この整理で、壁を塗る意味も生まれた。上から見た面積で勝敗を決めるだけなら、壁を塗っても点にはつながらない。だが、インクの中を移動する姿なら、塗った壁を登れる。隠れる、移動する、塗るという動作が結びついたところで、開発陣はイカという題材にたどり着いた。
豆腐からイカへの変化には、姿と遊びを結びつける試行錯誤があった。
