『ドラクエ』とすぎやまこういちを結んだアンケートはがき 将棋ゲームから始まった縁
すぎやまこういちが『ドラゴンクエスト』の音楽を手がけるきっかけは、将棋ソフトのアンケートはがきだった。本人の回想に残る、遊び手としての一通から始まった縁。

『ドラゴンクエスト』の音楽といえば、作曲家のすぎやまこういち。シリーズとの縁をつくったのは、本人がゲーム会社に送ったアンケートはがきだった。対象は『ドラクエ』ではなく、パソコン用の将棋ソフト。遊んだ側から届けた一通が、音楽を作る側との出会いにつながった。
すぎやまは、テレビのディレクターとして働くかたわら作曲家として活動し、『恋のフーガ』『亜麻色の髪の乙女』などを生んだ。映画やアニメの音楽も手がける一方、もともとゲームが好きで、ボードゲームやカードゲームを楽しみ、インベーダーゲームの登場後はゲームセンターにも通っていた。
『森田将棋』のはがきから電話が来た
業界団体が2006年に刊行した冊子に、すぎやま自身の回想が残っている。パソコンゲームも遊ぶようになり、エニックスから発売された『森田将棋』を購入。そのアンケートはがきを書いて送ったことが、『ドラクエ』の作曲を担当するきっかけになったという。
名前は、普段使うひらがなの表記で記入した。本人が後から聞いた話では、はがきを見た会社の上層部は当初、小学生から届いたものだと思ったそうだ。そばにいた担当者が著名な作曲家だと気づき、ゲーム好きなら一緒に仕事ができるのではないかと、すぎやまに電話がかかってきた。
初代の開発を担ったチュンソフトの中村光一とは、初対面では相手が身構えていたものの、ゲームの話をすると打ち解けたと振り返る。ただし、エニックスで最初に手がけた音楽は別のパソコンゲーム。『ドラクエ』が同社での初仕事だったわけではない。
遊び手の縁が長く続く音楽の仕事へ
依頼を受けた初代『ドラクエ』では、作曲に残された時間は1週間だった。短い期間でも仕上げられたのは、CM音楽を一晩で作るなど、それまでの仕事の蓄積があったからだという。ゲームへの親しみで始まった関係を、作曲家としての経験が支えた。
その後のシリーズでも音楽を担当し、楽曲はオーケストラで演奏されるようになった。長く共演した東京都交響楽団の紹介によれば、コンサートには、若い人がオーケストラに親しむ入口にしたいという思いもあった。ゲームで聴いた音楽を、生の演奏でも味わえる場が広がった。
長い仕事の始まりにあったのは、一人のゲーム好きとして投函したはがきだった。