一青窈『ハナミズキ』を書くきっかけは9.11だった 祝福の歌に重なる平和への願い
『ハナミズキ』の詞が生まれたきっかけは、2001年の米同時多発テロだった。一青窈が語る制作時の思いと、恋愛や大切な人への歌として聴かれることへの考え。

一青窈の『ハナミズキ』は、大切な人の幸せを願う歌として、結婚式でも歌われている。その詞を書くきっかけになったのは、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロだった。一青が当時込めたのは、平和への願いだ。ただ、本人は恋愛の歌として聴くことも受け入れている。
シングルの発売は2004年2月11日。『火曜サスペンス劇場』の主題歌にもなった。世に出た時期と、作り始めたきっかけの時期には隔たりがある。発売年だけから歌の背景を考えると、2001年の出来事とのつながりは見えにくい。
詞と曲に託した平和への願い
2017年のインタビューで一青は、ニューヨークのツインタワーが崩れる映像を見て、泣きながら言葉を書いたと振り返っている。詞は20分ほどで書けたという。考えを順序立てて説明するより先に言葉が出てきたような感覚で、世の中が平和になることを願っていた。
作曲のマシコタツロウも、武部聡志との対談で当時の制作を語っている。通常は曲を作ってから詞を乗せるところ、この曲では作詞と作曲を並行して進めた。マシコが旋律を考える一方、一青は言葉をスケッチブックに書き留め、数日後に同じ部屋で曲と言葉を合わせていったという。
編曲を手がけた武部は、2人のデモに込められた力を感じ、詞には手を加えられないと思ったと話している。一方で和音の使い方には調整を加えた。きれいに響く和音の一部をより素直なものに変えたのは、2人の願いや祈りが伝わる形を考えたからだった。
聴き手の受け取り方も大切に
歌が広まるにつれ、一青は恋愛の歌かと尋ねられたり、結婚式で歌われたりすることで、そういう受け取られ方もあると気づいた。出版社のインタビューでは、好きな人の幸せを祈る曲だと感じてもらってよいと話している。聴き方を制作時の出来事だけに限定する考えではない。
それでも背景を伝えてきたのは、歌の世界をさらに知ってもらえると思ったからだ。ライブで制作の発端を説明し、観客と気持ちを共有できたと感じたこともあったという。作り手の経験を話すことが、歌を聴く時間を深める場合もあった。
身近な誰かを大切に思う気持ちの先に、遠くの人の平穏を願う思いも重なる。